昨夜、青森市ワラッセで『デフレの正体』『里山資本主義』の藻谷浩介さんの講演があり、足を伸ばしました。
主催は青森市商工会議所青年部(YEG)、隠れた主題は言うまでもなく青森市庁舎移転問題でしたが、そのことの是非は部外者が語るべきことではありませんし、講演そのものも人口減少や日本の貿易収支からみた青森市というよりも地方都市の生き残り戦略にほとんどの時間を費やしていましたので、そこから弘前市として考えるべきことをお知らせしたいと思います。
藻谷さんは、推計が甘いとされている厚生労働省・人口問題研究所のデータを用いて、2020年には青森市では2.8万人の人口が減り、そのペースが続けば40年後には15歳未満の子どもがいなくなり、60年後には64歳までの就労人口がゼロになるという衝撃の数字を示しましたが、これは仙台でも東京でも期間の長短はあっても同様の流れの中にあり、65歳以上の高齢者や75歳以上の後期高齢者人口の急増を考えると大都市の方が問題が深刻だと喝破しました。
この若年者と高齢者の減少率を横軸・縦軸に取って点描すると未来の深刻度や現在の対策が功を奏しているかどうかがわかるのだそうで、人口4000人の長野県下條村や秋田県大潟村が日本の優等生なのだそうです。
これを世界に広げると、人口が増加している地域ではそれに対応して仕事を振り分けることができるはずがなく、中国韓国などのアジア諸国では日本以上のスピードで高齢化が進むことなどを考えると、人口減少そのものを問題視するより他よりも恵まれていると考えるべきだとの指摘は、目から鱗の話でした。
また、石油の使用量が2000年前後と変わっていないのに価格が3倍以上になっていることを考えれば、資源エネルギーに頼らない生活に切り替えていくことが一番大切であり、人口減少とあわせて考えると青森市が進めてきたコンパクトシティの発想が理にかなっているのだそうです。
その上で、貿易収支で資源以外で赤字を作っているのはフランスのワインやイタリアのパスタといった農産物なのだそうで、青森市は観光で訪ねた人に最高の食材でおもてなしをして、それを全国さらには世界中からお取り寄せしてもらう戦略が必要だし、それができる可能性が十分あるのに市民にその自信や意気ごみがないのが問題だとズバリ指摘していました。
ひるがえって弘前市にあてはめてみると、若年者と高齢者のクロスでいえば旧三市のうち一番状況がいいことにはなっているものの、下條村などのような若年者の減少に歯止めをかける対策はまだまだという位置づけですし、それだけに経営計画で人口減少を最優先に掲げて取り組む意義は大きいと思います。
そのためには、藻谷さんがイタリア戦略と名づけた観光から食材販売拡大という方法は、弘前市には青森市以上のアドバンテージがあると思いますので、ドリプラで水木たける君がプレゼンしたように津軽のりんご園地を日本のシャンパーニュにするくらいの気概で取り組むのを、個人や有志にとどめず市全体として推進していく必要があります。
それにつながるものとして、最近の農家によるシードルづくりには注目すべきだと思います。りんご公園にできたkimoriや先日の大会で最優秀となった田村シードルなど目立った取り組みも出てきましたし、これを商工観光部門でも後押しして、鍛冶町の店には必ずシードルが置いてあるとか、ねぷたまつりには生ビールではなくサーバーでシードルが出されるといった工夫ができれば可能性も広がると思うのです。
そのヒントを得ただけでも聴いた甲斐がありましたが、弘前市をテーマに語ってもらう機会があればなおありがたいと思います。藻谷さん、よろしくお願いします。
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