2014年6月23日月曜日

市民自治の先駆者・鳴海修に学ぶ

昨日は、長らく借りっぱなしになっていた『回想の鳴海修』を読了しました。
本を貸してくれたのは、修先生の孫であり私にとっては高校同期で一番信頼のおける医師である鳴海晃君でしたが、そもそものきっかけは修先生が若かりし頃に弘前における東亜連盟の活動の中核を担っていたと知ったからで、その手がかりになればとのことだったのですが、読んでみると生業である医師としてだけでなく、子ども会連合会を立ち上げ、町会連合会を組織し、市民会館建設の先頭に立ち、市民文化祭をスタートさせ、南高校初代PTA会長を務め、母校である東奥義塾理事長として石川移転による再建を果たすという、今の弘前市の基礎となっている多くのことを形づくった方だというのを、はじめて明確に知ることができました。
回想を記した方々も、弘前市史に名を残すような各界の代表者でしたが、七峰会元理事長である奥田稔先生が市連P事務局長時代のことを書かれていたり、妻の恩師である前田みき先生が子ども会のリーダーとして思い出していたりで、幅広いどころか私とつながるところまでのご縁のある方とは思いもよらず、その情熱あふれる活動と人間味があふれてくるエピソードに引きこまれてしまいました。
私も、市議時代に市民文化祭町会のあり方を論じてみると必ず鳴海修という人物に突き当たっていましたが、今では変容してしまっていることも多いのもわかりましたので、いくつかピックアップしておきたいと思います。

一つは、市民会館です。
当時、市役所が移転新築して旧公会堂が取り壊され、大きなイベントができる会場がなくなっていたことから持ち上がった市民会館建設ですが、当時子ども会連合会と町会連合会の会長を兼ねていた修先生は、「子どもたちのために市民会館を建てよう、そのために市民みんなで協力しよう」と町会を通じて毎戸10円の寄附を2年半集めたのだそうです。
この歴史も知りませんでしたが、子どもたちのためということに主眼を置いて当時の会館職員は貸し館よりも自主事業に工夫と努力を重ねて、ほとんどの職員が過労でダウンするほどだったそうですが、近年はそういった前向きな取り組みはなく、これに関連してスタートした市民文化祭も前市長時代に当初の骨組みが解体されてしまいました。
今、改修を終えた市民会館は指定管理が導入されようとしていますが、同じく「子どもたちの笑顔」をメインテーマに進められている葛西市政で、建設当時の思いやエネルギーが復活させるためにも、このような歴史を振り返る必要があると思いました。
もう一つは、やはり町会連合会です。
昭和の大合併で11町村が新たに弘前市となり、今の3市町村合併以上のギクシャク感が充満していた中で町会連合会を組織し、そこで市と町会との距離を縮め新市建設のための議論を重ねようという意図を持って市政懇談会をはじめたのも修先生なのだそうで、当時は会長自ら司会役として議論を促していたのだそうです。
また、当時はゴミの問題で衛生状態が非常に悪かったそうで、この解消のために市職員と町会連合会とで一緒に先進地視察をし、そこから対策を話し合って実行していったというエピソードを知ると、町会連合会の方が市を引っぱっていた時代の様子が伝わります。
それがあって今でも「町会連合会は自主独立」とは言っていますが、低調な地域ごとの陳情の場となっている市政懇談会や、市を動かすような取り組みどころか市からの補助金でようやく運営している状況の連合会の現状を見るにつけ、町会から市政を動かす必要性を痛感します。

修先生は、これだけ市民の先頭に立って活動し、藤森・福士両市長を支える立場でもあったことから「陰の市長」とも呼ばれていたそうですが、公選時代の教育委員選挙に出た以外は自らが政治の場に出ることをよしとせず、周りの仲間にも政治より大事なのが町会活動だと訴えていたそうで、1971年に町会連合会副会長から市議に立候補のあいさつにきた渡辺寿一氏に、
「市会議員になったって一体何になるんだバ、われわれが今やっている町会の仕事の方が議場でやる議員活動よりはるかに有意義だし、実感もあるンダネ、本物ダネ」
とおっしゃったそうですが、これは町会長という立場でできることを知った上で市議としての再起をめざす私としては、市民とともに行動することが議場で発言するより大事なことだとの戒めにしたいと思います。
蛇足を顧みずにもう一つ心に残ったのは、最後の見舞いにきた甥である鳴海康安先生に、
「康安君、政治サはまるなよ。なんでも話サのって、なんだかんだやるなよ。それよりしっかり医者サマやれよ。」
との言葉をかけたことです。康安先生には、この遺言を思い出して市民ゴルフ場の始末にあたっていただきたいと心から願っています。

それにしても、まさに巨星としか言いようのない大人物・鳴海修先生ですが、その足跡を知りわずかでもご縁があることを頼りに、少しでも近づけるようにめざしていきたいと思います。

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