2014年10月16日木曜日

農業と農村の両立は可能か

昨日、農業でのワークシェアリングを提言したところ、農業で勝負している友人から
「兼業の維持温存は国際産業競争力弱体化への道です。農業従事者が多い地域ですから尚更専業への集約、農業の産業化、兼業廃止を国策として徹底して行くよう求めるべきです。」という、思いのつまったコメントをいただきました。
これは、農業を集約して産業化を図ることと、農村ひいては弘前市を雇用の面から人口維持していくこととが背反していることの表れだと思い、ヒントになればと思って塩見直紀『半農半Xという生き方【決定版】』を一晩で読了しました。
これをふまえて、農業と農村の両立は可能かどうか、そのためにはどんな方策が必要かを考えてみたいと思います。

塩見さんは、神戸市での大手企業生活を33歳でやめ、「半農半X」を標榜して故郷の京都府綾部市に戻って「里山ねっと・あやべ」を通じてのまちづくりや移住支援に取り組んでこられた方です。著書の中には、実際に移住された方や綾部に住んでこられた方にX=天与の仕事を見つけるお手伝いをした例が満載で、こういう生活ができたらいいなと思わせる暮らしが描かれていますし、「『里山自然主義』に先立つこと10年。「半農半X」は世界の共通語。」と推薦文を寄せた藻谷浩介さんの主張と相通じるものがありますので、弘前市にとっても示唆に富む内容です。
ただ、前述した友人のコメントと引きくらべて読んでいましたので、天与の仕事を持った人が移住してくることでの人口維持や経済的なプラスも見こめるにしても、その人たちがわずかとはいっても田畑を耕していることで農業の補助対象となっているのかといった状況や、成功できずに去っていった例はあるのかという疑問、さらにはこういった形の兼業が増えることで専業で勝負しようとする農家にとっての政策的な足かせとならないかといった不安も感じますので、機会があれば塩見さんご本人と綾部市からお話を聞きたいものだと思います。

確かに、雲行きが怪しくなってきたとはいえTPPに見られるような国際競争の時代に、自分の食い扶持程度を作る農家まで保護する政策を続けているわけにはいかないという主張はもっともですが、収入は兼業の方から得るのが大きくても家や田畑があるからこそ農村で暮らし続けている農家が、支えがなくなって減ってしまえば農村そのものが消滅していくことになりかねませんし、難しいところです。
具体的には提言できるところではありませんが、農業政策としては専業による産業化、これとは切り離して農村維持につながる対策を打つという区別をしなければ、どちらも成り立たないという意識での立案が必要なのだと思います。

それにしても、ブラック企業のことからワークシェアリングに話が進み、それが農業と農村の両立ということにかかわってくるのですから、政治とは目の前の問題解決にあたりながらも大所高所からの視点を忘れてはならないことを思い知らされますし、そのことを気づかせてくれる友人がいることに感謝したいと思います。
今回の件でも、ぜひ多くの異論反論をお待ちしています。

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